アタシはイレモノ
すると、ドアがゆっくりと開かれた。


中から出てきたのは20代前半くらいに見える綺麗な女性だった。


増田という人ののお姉さんかもしれない。


お腹が大きく膨れていて、もうすぐ生まれてくるのだということがわかった。


「あ、ごめんなさい」


大変な時期に押しかけてしまったと言う気持ちをが先に立ち、咄嗟にそう言っていた。


「なにか御用?」


今にも倒れてしまいそうな儚さのある女性は、小首を傾げてそう聞いてきた。


「増田君が戻って来たかどうか、心配で……」


栞理が不安そうな表情をしてそう言った。


その瞬間、女性の表情が曇った。


「あなたたちは友達だから、その事を知っているのね……。まだ、戻ってこないのよ」


「そうなんですか……」


あたしはつられて気分が落ち込んでしまった。


行方不明者の家族は、計り知れない悲しみを持っているに違いない。


「実は少し気になる事があるんです」


栞理がそう言い、女性が栞理へと視線を移した。


「増田君って、好きな人とかいませんでしたか?」


「好きな人……? 直接聞いたことはないけれど、いるような素振りはしていたけど……それがどうかしたの?」
< 242 / 275 >

この作品をシェア

pagetop