【超短編 15】門倉先生の雑談
門倉先生の雑談
 門倉先生はチョークをおもむろに黒板の下に置き生徒のほうを向くと静かに語り始めた。
「これからする話は別に面白くも何ともないのだけれど、皆さんよかったら聞いてください。聞きたくない人は好きなことをしていても構いません」
 彼が今まで授業中に他の人気がある先生のように雑談をすることがなく、そういう事をするような先生にも見えなかったので、一瞬のどよめきの後生徒は全員、彼に注目した。
「実はこの間の日曜日、とても不思議な体験をしました。私はいつも日曜日にたまっている洗濯物をコインランドリーに行って洗濯するのですが、コインランドリーを使ったことがある人いますか?」
 誰も手を上げなかった。実際は教室の中に一人暮らしをしている生徒が4人いて、使ったことのあるものもいたのだが、なんとなく彼の話の腰を折るような気がして手を上げられなかったのだ。
「そうですか。まぁ、最近の若い人はあまり使わないんでしょうね。僕のよく行っているコインランドリーというのがまた時代を感じるような造りで、広さにしたら8畳くらいですか。壁側全部に乾燥機と洗濯機が並んでいまして、中央にベンチと灰皿があるだけなんです。そして隅のほうにトイレがあります」
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