brass band
 いざ、女の人につれられ、入部もとい見学に来てみたところ、当然ながら同じ二年生など誰一人としていなかった。
 そもそも見学者自体、私しかいなかった。
 周りを見渡せば、大きな人影。
 私より遥かに高い背丈。年上の雰囲気漂う部屋。
 そんな雰囲気のなかに、一人黙々と練習する兄の姿があった。
 生まれつき、私とは違って、大きな体をしていた兄は、その体に合うくらい大きな楽器を持っていた。
 本当に兄に似合う大きな楽器だった。
 金色で、大きく、重そうな楽器。
 それを巧みに演奏する兄の姿は、私には遠く感じた。
 生まれ持ったものが人それぞれ違うと言うけれど、私には何もない。兄とは違う存在で、私はガラクタ。
『担当の人が来ると思うから、この椅子に座ってまってて』
 思いふけっていたら、女の人に声をかけられた。
『は、はい』
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