あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]



 クレアに、そんなことが……。

 この前、クレアとお風呂に入ったことがあった。

 そのとき、ちらりと見えてしまったクレアの背中を埋め尽くすような、痛々しいみみずばれのような傷痕。

 けれど、なぜかクレアにそのことを聞くことができなくて。

 でも、それはこういうことだったんだね。
 
 クレアのその小さな背には、本当にたくさんのことを背負ってたんだね。

 あたしには、計り知れないほど大きなものを。

 あの悲しい笑顔の裏にはそんなものが隠れていて、ショウが目覚めたことにより、ようやく安心して笑うことができたんだ。

 クレアたちはこのまま、幸せになってほしい。

 もう二度とそんな悲しいことが起こらぬように。

 あたしが皆を守れるくらい強くなりたい。



 中庭についてお喋りしていると、それほど経たないうちに、クレアとショウは中庭に現れた。


「それで、任務というのは?」

「ああ、そうだったね。クレア、今ウェズリアでとある事件が多発してるの、知っているでしょう?」

「使い魔が行方不明になっているとか、なんとかいうやつですよね」


 おお、さすがクレア。
 
 情報が早いですねー。

 でもどれもまだ噂に過ぎず、詳しいことを知っているのは軍の上層部だけだと思ってたけど、それなりに頭の回る人には伝わっているらしかった。

 
「それで、カカオにさっき頼まれたの。この事件について調べるように、って」

「カカオ国王が?」

「だから、よければクレアにも手伝ってほしくて……」

「私ですか!?」


 クレアは素っ頓狂な声を出した。

 そんなに驚かなくても。


「私など、まおさんのお役に立てるかどうか……」

「クレアがいてくれれば百人力なんだけど……」


 あたしはクレアの能力の高さを買っている。

 もっと大きくなれば最強魔術師になることだろう。


 
< 15 / 87 >

この作品をシェア

pagetop