ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉


 森でバケモノを退治した私たちは、男の子から話を聞いた母親が通報したことによって、後からきたウェズリアの軍隊に見つけられ、救出された。

 ショウは、軍隊の〈翡翠〉のチームによって治癒魔法をかけられたけれど、いまだに目覚めていない。

 彼は、私の胸の内と、背中に深い傷痕を残したまま……夢の世界に囚われ続けている。

 
「ありがとうね~、また相手お願いね!」

「はい、こちらこそ、ありがとうございました」


 日課の練習を終えて、まおさんと別れたあと、私はショウが静養している場所へと向かった。

 〈千年霊木〉の近く、静かな戸建ての建物。

 ベージュの壁が特徴の部屋は自然に囲まれているところだ。

 彼を回復させるには、自然が多く、空気と魔力がより一層純粋で澄んでいる場所が一番良いだろうと医者に言われていた。

 その点、〈千年霊木〉は魔力の源泉と言われるだけあって、最も純度の高い澄んだ魔力が宿っている。

 魔力保有者が療養するにはぴったりの場所だった。

 軍所属の私は、軍の寮に入っているため、ここには来れる限りきて、掃除しているからか、わりとキレイ。

 その中央におかれたベッドに、彼は横たわっていた。

 光が差し込んで、彼だけを映し出す。

 長い睫毛が、白い肌に影を落とす。

 もう一年経っちゃった。

 彼の頬を撫でると、あのときと変わらず、冷たかった。

 ねぇ、ショウ。

 私、軍隊に入ったよ。

 夢、叶えたよ。

 ショウとの約束、叶えたんだよ……?

 ねぇ、本当にこのまま目覚めないの?

 私、まだ大切なこと、伝えられてないんだよ?

 だから、


「起きてよぉ、ショウ……!」


 ポタリと、頬を伝って涙は彼の頬を濡らす。



< 33 / 41 >

この作品をシェア

pagetop