くるまのなかで
「いやぁ、懐かしいな、この組み合わせ。やっぱしっくりくるぜ」
と笑うタケ先輩。
お店の名刺には『キッチン・タケ』と書いてある。
最初に私たちを迎えてくれた小柄な女性は、彼の姉さん女房だという。
家には小学生になる娘さんもいるそうだ。
「つーかお前ら、また付き合ってんの?」
タケさんの質問に、私と奏太は同時にウーロン茶を吹きそうになった。
そういう率直なところは、高校時代と変わっていないみたい。
「あーはいはい、そういうことね。悪かったよ」
タケ先輩は私たちの間の微妙は空気を感じ取り、ニヤニヤ笑いながらコンロの方へと戻っていった。
タイミングよくオーダーも入る。
「あいつ、中身は相変わらずあんな感じだけど、料理の腕だけは確かだから」
照れた顔でそう言った奏太。
そんな顔を見せられると、私の方こそ照れてしまう。
『お前ら、また付き合ってんの?』
いいえ、でも、そうなるといいなって、思ってますよ。
奏太もそう思ってくれてたらいいなって、思ってますよ。