くるまのなかで
「なに、これ……」
開かれた書類には、このように書かれている。
『独身証明書』
こんな書類、見たことない。
タイトル以下は、奏太の氏名、生年月日、本籍地に続いて、このように書かれている。
『当庁保管の公簿によれば、上記のものが婚姻するに当たり、民法第732条(重婚の禁止)の規定に抵触しないことを証明する』
見覚えのある役所の用紙に印字されたそれは、その下に市長の氏名と捺印まである。
どうやら本当に、公式の書類のようだ。
こんな証明書があるなんて知らなかった。
「俺がまだ独身だっていう証拠。清香から話を聞いて、取ってきた。もちろん離婚経験もないよ。あ、そう考えたら戸籍謄本の方がよかったのかな」
「じゃあ、由美先輩は? 子供は? 一緒に住んでるんでしょう?」
「……うん」
ほら、やっぱり。
独身がなんだっていうの。
籍なんて入っていなくたって、二人の間に子供がいて生活が成り立っているのなら、どっちにしろ私は騙されていることになる。
「由美と由美の子供……和博(かずひろ)っていうんだけど、一緒に住んでるのは事実。でも、カズは俺の子じゃないし、俺は由美とどうこうなろうなんて思ったこともない」