くるまのなかで
お互いの連休最終日。
今日はあのまま帰宅せずにうちに泊まった奏太と、一日中私の部屋にこもっていた。
昨日とおとといが嘘のように、色気しかない一日。
昨夜帰宅してから今までの約20時間、服を着ていた時間の方が短いのではないだろうか。
「梨乃こそ、俺なんかのどこがよかったの?」
「え?」
私は“徳井奏太”という存在そのものが好きだから、そんなの考えたこともなかった。
「うーん、まあ、全体的に?」
見た目だけで言えば、枕木チーフには少し劣る。
でもそれ以外は圧勝だ。
「それじゃあ俺もわかんないよ」
「具体的に言うなら……黒髪なのが好き。香水とかアクセとか、チャラチャラしたものをつけないとこが好き。言葉遣いが優しいとこも好きだし、安全運転してくれるとこも好き。ちゃんと努力して夢を叶えたとこも好き。夢を叶えても、自らステップアップしようと努力し続けてるとこも好き。とにかく好き」
挙げればキリがない。
まだまだある。
顔も声も、指先の丸い指も好きだし、吸い付くと身を捩って反応する敏感な首筋も、脇腹にある3つのホクロも好きなのだ。
「……だから、そういうとこがたまらないんだって」
奏太は思いきり照れた顔をして私をぎゅうぎゅうに抱きしめた。
触れる生肌から彼の匂いがして、こちらこそたまらない。
そんな気持ちも、私は顔に出してしまっているのだろうか。