くるまのなかで
「気になると聞けなくなると思うから先に聞くけど、奏太、私と別れてから何人の人と付き合った?」
「えっ……。そういうこと聞いちゃう?」
「ダメだった?」
奏太はあまり言いたくなさそうな顔をしている。
でも、また変な誤解をしてこじれるよりは、ちゃんと先に知っておきたい。
「ちゃんと付き合ったのは、二人。普通に出会って、恋愛らしいことして、円満に別れた。あとは、まあ。体だけっていうのが何人か」
「へえ、意外。奏太でも、体だけとかあるんだ」
一人を大切にするイメージが強かったから、そういう遊びみたいなのはしないと思っていた。
「まあ、どの子とも梨乃ほど長続きしなかったけどね」
「ああ、そこは私と一緒」
そう漏らすと、奏太はぎゅっと眉間にシワを寄せた。
「俺はそれ以上聞きたくない」
「なんで? 気にならない?」
言い終わる前に、横を向いて奏太に抱きついていた私は仰向けになっていた。
わずか5センチのところに奏太の顔。
さっきよりも上半身が密着している。
「気になるに決まってるだろ。俺と別れてから今までに梨乃を抱いた男、全員殴りたいと思う程度には」
「なにそれ。ちょっとキュンとした」
「あのね、冗談で言ったわけじゃないんだよ」
この日、奏太が私の部屋を出たのは午後9時過ぎだった。
明日からまた仕事が始まるが、奏太がたっぷりエネルギーを充電してくれたから、激務でも頑張れそうだ。