くるまのなかで
コミュニケーターの給与申請、消費した備品の報告、クライアントから依頼されているマニュアルの変更報告など、種類別に1枚でまとめてある。
いつやってくれるのかとそわそわしながら期限ギリギリまで待つより、余裕を持って突っついておいた方がスムーズに仕事が進むから、最近は彼の忙しさに遠慮せず、そうすることにした。
チーフは私の顔を眺めながら、面白くなさそうにため息をついた。
相変わらず失礼なイケメンである。
「お前、いつの間に仕事できる子になっちゃったの?」
「いつの間にって、働いてる間にですよ。8ヶ月もやってれば、さすがに仕事やチーフの扱いも覚えますって」
ドヤ顔をかましたい気持ちを抑え、その代わり言葉に少し嫌味を添える。
彼はフン、と鼻を鳴らして書類をめくった。
「そういやお前、最近妙に落ち着いてんな。夏はブサイクに笑ったりブサイクに落ち込んだりしてたくせに」
……この野郎、ブサイクブサイクって。
本当にセクハラで訴えてやろうか。
自分の顔がイケてるからって調子に乗んなよクソチーフ。
と言いたくなったのを、グッと堪えて口角を上げる。
「おかげさまで、元の鞘に収まりました。色々覚悟が決まったんで、落ち着いてますよ。つーかお前って呼ばないでください」
「覚悟?」
「ええ。戦う覚悟です」