くるまのなかで
「じゃあ、これからは奏太のとこに持っていく」
私がそう宣言すると、奏太は満足そうに微笑んだ。
「うん。そうして」
その笑顔に胸が疼き、気持ちがどんどん膨らんでいく。
そのうち堪えられなくなって、思わず「好き」と口走ってしまわないかヒヤヒヤする。
「というわけで、これからいったん宇津木自動車に寄るけど、いい?」
「いいけど、どうして?」
「オイルとパッドとタイヤ、俺が勝手に変えるわけにはいかないから。ちゃんと説明して、梨乃の了解を取ってから交換する」
「そんなの、奏太に全部任せるよ?」
「ダーメ。費用だってそれなりにかかるんだから、ちゃんと全部納得してからじゃないと」
なんていうか、信じられないくらい真面目になったなぁ。
これでいわゆる元ヤンなのだから笑えてしまう。
「ふふふっ」
私は堪えきれず、笑いを漏らしてしまった。
「え、何?」
「ううん」
更生したね、なんて言ったら拗ねられてしまうだろうか。
「何だよー。気になるだろ」
だったら、ずっと気にしていればいい。
そうして少しでも長く私のことを考えてしまえばいいんだ。