不良の俺とクールな後輩
「ユキ君はどうして麻耶と仲良くなったんだ?」
突然話の内容が変わって俺は驚いて顔を上げた。
これには大輝も興味があるらしくゲーム片手に俺を見ている。
「学校で気の合うやつが集まるグループみたいなのがあるんですけど、その時に麻耶が乗り込んできたんですよ。
それで知り合いました。」
初めて中庭で会ってタバコの話をした時と昼飯の時の話をすると2人は声を上げて笑った。
「なんと言うかまぁ……麻耶らしい。」
奏さんはニコニコ笑ってコーヒーの入ったカップを置いた。
こう見ていれば全然暴力団のトップだとは思えなくて、俺はまだこの状況をよく理解できないでいた。
「……まぁ、全てはなるようになるんだよ。
いつまでも何も変わらず楽しいままであるわけがない。
だからと言って辛い状況が続くわけでもないさ。
今が辛くても、いつか必ず明るい未来が来るからね。
その時にうんと楽しめるように準備しとくしか俺達にできることはないな。」
奏さんが言う「辛い」ことが何なのか、今の俺にはまだ聞くことはできなかった。
今この家族が直面してる「辛い」ことに俺が関わる権利はなかった。
「ユキ君。」
「あ、はい。」
急に奏さんが俺を見てちょっと笑った。
「摩耶を、よろしくね。
俺達はいつもあの子の側についていてあげることはできないから。」
「俺がいるんだけど。」
大輝が不満そうな声をあげても奏さんは相変わらず笑顔だった。
「お前には無理だ。兄という立場には限界がある。」
「あの、俺。」
俺の声に2人とも顔を上げた。