精一杯の背伸びを
でもそのオレンジ色の光もすぐになくなって、薄い闇に覆われ、あっという間に本物の闇に覆われる。
私も呑みこんで。
辺りは木々だけで、その木々のざわめきが大きく聞こえた。
それ以外の物音と言えばセミの合唱だけで、人の声はどこからも聞こない。
さっきまであちらこちらから、キャンプを楽しんでいる声が聞こえたのに。
いつの間にか遠くに来てしまっていた。
怖かった。
闇が私を呑みこんでしまいそうで。
だんだんオレンジ色の夕焼けが闇に染まっていく。
怖かった。
だけど。
私は知ってる。
このオレンジ色の夕焼けのように淡く優しい光を持っている人を。
温かな手を持っている人を。
きっと見つけてくれる。
だから私は闇に呑みこまれない。
「小春」
ほら。
やっぱり。
私を導いてくれる温かな優しい手。
差し出された手はオレンジ色の夕焼けに照らされていた。
私は知っている。
彼が手を差し伸べてくれることを。
私は淡いオレンジ色の光で照らされた手に自分の手を伸ばす。
「仁くん」
私は知っている。
いつでも、この手が私を救ってくれることを。