精一杯の背伸びを






「あなたに、仁くんの、何が、わかるのよ?何も、知らないくせに、勝手なこと、言わないでよ……」



 仁くんのことなんて考えたくない。


 それなのに。


 榊田君が憎い。



「ストップ。小春ちゃん。熱が少しあるからゆっくり寝て。ねぇ?」


 小夜ちゃんが優しく私の肩を抱いた。


 ああ。


 二人の前でこんなこと言いたくなかった。


 涙がこぼれ落ちた。


 苦しい。


 心が苦しくて。


 頭が割れるように痛い。


 何も考えたくない。



「榊田。あんたはいつまでいる気なの?ここは女部屋よ。とっとと出てけ!」



 朔ちゃんが榊田君を押しやる。


 榊田君は立ち上がり、言葉を落とした。



「水野。お前は何にも見えてないのな」



 榊田君の声には冷ややかさも怒りもなく。


 ただ事実を口にしたかのようだった。



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