精一杯の背伸びを




「小春ちゃん。榊田君と仲直りして?彼、小春ちゃんのこと本当に心配してたの。きっと今も」



「あんたのせいで怒鳴られたんだからね。小春は散歩って言った途端、『この馬鹿が!!』って、血相変えて飛び出して行ったんだから」



 朔ちゃんは肩をすくめてみせた。



「小春ちゃんのこと叩いたのも、すごく心配してたから抑さえきれなかったんだと思う。夕食も取らないで、ずっと小春ちゃんの傍にいたんだよ?」



 小夜ちゃんは、なんとか理解してもらおうと必死だった。


 わかってる。


 榊田君に感謝こそすれ、彼を責めるいわれなんて私にはない。


 叩かれて当然だ。


 拳で殴られなかったのが不思議なくらいだ。



「いつから、二人して榊田君の弁護人になったの?」



 また、こんな言い方をしてしまう。


 本当に捻くれていて可愛げがない。


 素直じゃない。


 朔ちゃんが苛立って、ため息を吐いた。




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