精一杯の背伸びを

故意の偶然





 吹雪は次の日になっても続いていた。


 そして、その次の日も。


 これでは、雪だるまもすぐに埋まってしまう。


 せっかく、久しぶりに作ろうと思ったのに。


 時間は単調に過ぎていった。


 三日目の夕方になると雪はおさまりつつある。


 だが、まだすごい雪。


 天気予報は夜にはやむと言っていたが微妙な感じだ。


 お母さんや榊田君と話したり、一人でぼっーとしたり。


 隣町の温泉施設に行ったり。


 つらつら、これからのことを考えては、思い出に浸り。


 そんなことを繰り返した。


 もうすっかり、お母さんと榊田君は仲良くなり、いつもの榊田君になった。


 行儀良く微笑みを浮かべる榊田君は、間違いなく好青年で。


 他の女の子が見れば悲鳴をあげるほど素敵なんだろうけど。


 まぁ、無愛想でも悲鳴があがっているが。


 とにかく、私には悲鳴をあげるほど胡散臭い。


 それを、ぽろりと榊田君に漏らしたら行儀良く、微笑みを浮かべる榊田君になった。


 一時間だけ。


 これが限界らしい。



「吹雪じゃなかったら、友達に榊田君紹介したのにな」



 私はこたつに頭をのせながら、みかんを口に放り込んだ。


 行儀が悪いが、実家では寛ぎたい。



「俺を動物園のパンダにするつもりか」



 書物から顔を上げ、私を睨みつける。



「こんな格好良い男の子を隠し持っていたら、村八分に合うわ」



 お母さんが、なんとも微妙な冗談を言う。


 言うべき言葉が見つからず、榊田君はため息を吐いた。



< 196 / 233 >

この作品をシェア

pagetop