精一杯の背伸びを



「お母さんのそのセリフって、仁くんと似てる。この間、遊園地に行った時に」



 そこで言葉を切る。


 何を口走っているのか。


 嫌なことを思い出す。


 お母さんは私の気も知らず口元を緩めた。



「仁くんは女性を褒めないと気が済まない性格なのよ。あんたのことだって褒めたようにね」



 その言葉に思わず、ごくりと唾を飲んだ。



「私はお世辞なんて言わないわよ。だから、俊君安心してね」



 榊田君は気のない返事をした。


 私は違う。


 他の人とは違う。


 仁くんにとって私は特別。



「私は違う。一緒にしないでよ。綺麗になったし、料理だって、空手だって、全部本当に褒めてくれた。私に対しては違う。私は仁くんにとって特別だもん!」



 最初は普通に話していたはずなのに、いつの間にか怒鳴っていた。


 お母さんと榊田君が、目を見開き私を見ている。


 勢い余って立ち上がっていた。


 私は身を縮めながら、こたつに足を入れる。



「私は違う」


 もう一度言った。


 すごく居た堪れない。


 何をムキになっているのか。


 私は。



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