精一杯の背伸びを




「踵の高い靴で歩けるように、料理も勉強も、運動も、自分磨きも一生懸命やったって。頑張ったって。言っても良いと思う」



 他の人が評価することだ。


 自分で言う言葉じゃない。



「そう?私は言うべきじゃないと思う」


「お前じゃなくて、仁の意見だろ。で、これはあくまで俺の意見だ」



 それから榊田君は大きく息を吐いた。



「水野は、自分で考えられる限りの努力をしてきたんだろ?七年間」



「…………」



「七年間だけじゃない。水野はこの一年も頑張ってきた」



「…………」



「自分を否定するな」



「…………」



「卑下するな。自分を褒めてやれ。頑張ったんだから頑張ったって胸を張って言えば良い」



「…………」



「何で、お前がこそこそ隠れてんだ?仁が隠れるならともかく、お前に落ち度はない」



 榊田君はベッドから立ち上がった。




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