精一杯の背伸びを




「ありがとう。榊田君に褒めてもらえると自信になるよ」



「これなら水野の幼馴染とやらも馬鹿にはできないはずだ」



 まだ友人になって日は浅いけれども私は榊田君に絶大な信頼を寄せている。


 仁くんのことを話すくらいに。


 しかし、ここまで褒められると少し気味が悪い。



「どうしたの?」



「はぁ?何が?」



 彼は里芋を綺麗な箸捌きで口に入れた。



「榊田君が褒めるから」



 彼は里芋を咀嚼してから、目を鋭く細め私を見た。


 いや、睨み付けた。



「お前は俺を何だと思っている。褒める事ぐらいある」



 そうなんだ。意外だ。


 そんな私の心の内を読み取った彼は嘆息し持論を展開した。



「俺は思ったことを捻じ曲げて言ったりしない。俺の口が悪いのは、周りに鬱陶しいやつが大勢いるからそうなるだけだ」



「鬱陶しいね。榊田君にしたらそうかもね。でも女の子のことも考えてあげて。乙女心は繊細なのよ?」
私は苦笑しながら言った。



「繊細?世迷言だな。あんな厚かましいやつらが繊細なら、俺はどうなる」



「図太いでしょ?とんでもないこと言って周りを凍らせるんだから」



「意見の相違だな」



 彼はどうでも良さそうに言って、今度は漬物に箸をのばした。




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