精一杯の背伸びを





「いるのはわかってる。開けろ。死んでるのか?」



 と、無感動な声がひどく懐かしい。


 鍵とチェーンを外すと、勢いよくドアが開けられる。



「生きてたか。まだ熱あるのか?」



 そう言って私の姿を見ると、榊田君は目を大きく見開いた。



「平気。仮病だから。ごめん。帰ってもらって良い?」



 開口一番にそう言い、ドアを閉めようとする。


 今は誰とも関わりたくない。



「お前、どうした?人間とは思えない顔してる」



 そうだろう。


 お風呂は何回か入ったような気がするが髪は梳かしてないし。


 寝起きと泣き疲れで、目は半開き。


 顔も腫れている。


 肌だってカサカサだ。


 それぐらいは予想がついた。


 おまけにヨレヨレのジャージ。


 人前に出る格好じゃない。


 でも今の私の心を表しているようでしっくりくる。



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