精一杯の背伸びを




「それなら良かった。小春ちゃん、嫌なことがあっても顔に出さないから」



 私は何があっても外では何でもないように振舞うことを心がけている。


 それが大人だと思っている。



「嫌なことがないだけだよ?」



 私は外の流れる風景を見ながら答える。



「そうかな?ただ顔に出さないだけだと思うけど?小春ちゃんは凛としてるね。その表現がしっくりくる」



 どうしてだろう?


 話すように。


 呼吸をするように。


 みんなの前では毅然とできる。


 周囲を気遣える。


 私が願う、理想の私でいられる。


 それなのに、どうして仁くんの前では、駄々を捏ねるのだろう?


 不平不満と自分の都合を押し付ける、身勝手な子供になってしまうんだろう?


 仁くんの前で、凛としていたいのに。



「今までで最高の褒め言葉だ。ありがとう」


 不覚にも目が潤んだ。


 私は友達に恵まれている。


 私を救ってくれる友達がいる。


 そうでなければ今日だって、いつも通りに振舞えていなかった。


 もう無理して笑顔を貼り付ける心配はない。


 仁くんにしっかり謝って、今度こそ成長した私を見てもらおう。


 振り出しに戻っただけだ。




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