イケメン弁護士の求愛宣言!
ゆっくり振り向くと、A4サイズの分厚い書類を片手に、真斗さんが小さな笑顔を浮かべて立っている。

いつからいたのか分からないけど、自分にも私のことを教えてと言っていたくらいだから、会話を聞かれていたのかもしれない。

そう思うと、なぜだかとても恥ずかしかくて、真斗さんの言葉に返事ができなかった。

「そうやって、由依子ちゃんを困らせるなよな、真斗。昨夜偶然会っただけの男と、こんな場所で再会したんだから、気まずいにきまってるだろ? それより、由依子ちゃん。明日の裁判の書類の確認をしたいから、ちょっといい?」

私の様子で雰囲気を察したらしい来島先生は、事務所の端にある小部屋を親指で指差す。

そこはクライアントと話をする応接間とは別の、先生たちが打ち合わせなどで使う部屋だった。

「はい。でも、真斗さん……じゃなくて内野先生は、他になにかご用事だったんでは?」

書類が気になって声をかけると、真斗さんは笑顔を保ったまま、小さく首を横に振った。

「いや、大丈夫。由依子ちゃんに声をかけたかっただけだから。それと、呼び方は『真斗』でいいよ。『内野先生』だと、親父とかぶってややこしいだろ?」

そう言った真斗さんは、早々にデスクに戻って六法全書をパラパラめくっている。

本当は書類作りをするつもりだったんじゃないかと思うと、彼のことが気になり始めた。
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