恋が都合よく落ちてるわけない
須田さんは、あっさりと言った。

「架空の口座に、
会社の金が振り込まれた形跡があった。」


「それで?」




「データを調べ、ログを解析したら…」




「うん…」




「送金に使われたIDの中に、
君のものがあった」




「ちょっと待って、意味がわかんない」




「だから、君を調べる事になった」




「容疑者なの?私?」
須田さんは、笑って、
そこまで疑ってなかったよ。と言った。



「会社の金が、君のIDで
架空の会社宛に、お金を振り込むよう何度か振り込み操作がされていた」



「どういうこと?
私にそんな権限ないのに」



「それは、俺も知りたい」



須田さんが近付いて来て、
頭を鷲掴みにし、胸に抱いた。




「どういうこと?何で私が…」




「心当たり無いのか?」



「あるわけない」



「会社のシステムに
アクセスするのは、
会社のコンピュータで?」



「ええ…
そう決められてるから」




「家のパソコンを使った事があるのは、
君だけ?」



「ええ。まさか…そんな…」




「使ったの、君だけじゃないんだね」



実際に使ったところは、見ていない。でも、私がいない間にこの部屋にいた形跡は残っていた。

なんてこと!!




「犯人は?」
まさか、本当にあの人が…




「まだ、調べている」




「私は?まだ疑われてるの?」




「いや。君の疑いは晴れたよ。
俺が証明した」




「どういうこと?」




「台風の夜、君のIDを使って、
振り込み操作が行われた。
でも、君は俺と一緒にいた」




「それで?
私を調べるために近づいたの?」




「違う」




「私が犯人じゃないかって、疑ってた?」



「君のIDが使われた以上
疑わないわけには行かない」




「帰って…」



「今日は、帰らない。
西川課長が戻ってくるかも知れないし」




「ここに来ても大丈夫よ。
もう、鍵を変えたから」




「それは?いつ?」




「あの台風のあと、すぐ」
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