恋が都合よく落ちてるわけない
「ひどいキズ」

落ちていたブラを拾い上げ、
止め金をはめようとしたけど、
金具が壊れてた。

金具をとめる仕草をしてるのに、
ぷらんと宙ぶらりんになった
下着を見ていて須田さんが気がついた。


「擦り傷…痛かった?」


「うん」
痛いよ。聞くまでもなく。


「今度はちゃんとヒゲそっておくよ」



「うん」



「千鶴、鍵を変えたのはどうして?」

西川さんが、
合鍵で部屋に入っていたからだ。
が、正直に言っていいものか…


「合鍵、返してもらえなかったから…」

「鍵を渡したのはいつ?」

「その3か月前」


「彼は、部屋にいつ来た?」



「三回くらい。台風の日が最後…」

「それ、間違いない?
その日は、結局会ってなかったの?」

「ええ…」


「わかった。質問はそれだけ。あともう一度はしなきゃな」



「あの…私」




「わかってるよ。気にするな」


「それより、
この間の経理の子が話してくれたことで、
調べなきゃいけないことが増えて、
忙しくなるけど。
なるべく時間とるから」



「うん」

やっぱり、
西川さんが一番疑われてるのだろうか。


< 73 / 196 >

この作品をシェア

pagetop