恋のデザインは色鮮やかに。
県が運営する美術センター。
ここには、先日行われた大会のイラスト部門受賞作品が飾られている。


たしか去年も受賞してここに来たが、わざわざ出向く必要性は感じられなかった。


「お偉いさんって…。
ああいう人たちと話したいなんて思わないし、他の人の作品を見ても創作意欲は湧かない。

時間の無駄だ」


「ちょっと!

いつも時間を無駄にしてるあんたが何言ってるの。

絶対に他の人がいるところでそんなこと言わないでよね。

大手の会社とか権力あるイラストレーターとかに睨まれたら、うちみたいな小さな会社はすぐに潰れちゃうんだから!」


今俺の横でギャーギャーとわめいているのは、俺が勤めているデザイン会社、イクタデザインでグラフィックデザイナーとして働いている30歳の女、生田真央。


今日みたいにバッチリとメイクをしていればなかなかの美人だが、作業が続き会社泊まりが続くと劣化している。


が、誰もそのことには触れない。
それが暗黙のルールとなっている。
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