伸ばした腕のその先に
「誰をなくしたの」
 私はふわふわのベッドの上で、生まれたままの姿になりながら、それを聞いた。

 視線を横に向けると、そこでは燭台に刺さった二本の蝋燭が優しい光を放っている。
 まるで、それが私たちの命を表わしているようで、なんだか吹き消したい衝動に駆られてしまった。
「宵の大切な人は、どんな人だったの」
 私は、もう一度口にした。

 宵から死別の話を聞いたわけでもない。でも、それは彼を初めて見た時からの確信だった。彼もあの事故で大切な人をなくしたのだと。心に大きな空白を持っているのだと。
 すると、宵は私の髪に顔を埋めながら、ある名前を口にした。
「ソラ、っていったんだ」
 青空の空の一文字でソラ。
 遠い昔を慈しむような、小さな、とても小さな声で。

 突如、私の髪に埋められていた彼の顔が離れた。
 顔にかかる生暖かい吐息がなくなると、どこか寂しくなり、私は宵の様子を伺った。
 宵は私の頭を解放した後、ベッドに仰向けに寝転がっていた。そして、音もたてずに深呼吸をすると、
「空と会ったのは、大学一年の頃だった」
 ふいに、天井とおしゃべりを始めたのだった。
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