俺様社長の飼い猫
私はその声から逃げるように、エレベーターに向かい急いで乗った。

早く閉まって。

ドアにそうお願いする自分がいた。

ドアが閉まると同時に、紫音の顔がチラッと見えた。

…その顔は、少し動揺しているように見えた。

ドアが閉まり、ホッと溜息をつく。

「…スズ、昨日も会社休んでたな。心配してたんだぞ。家にも帰って来ないし」

その言葉に、心臓が跳ねた。

紫音に気を取られていて、エレベーターの中の人にまで、気が回らなかった。

「…柏木部長」

…営業部の部長にして、エース。

…そして、私の彼氏。

私は、柏木聖司(かしわぎせいじ)から、逃げ出した。

「…今、どこにいるんだ?」
「…」

その言葉に、答えることは出来ない。
< 20 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop