午前0時の恋人契約



「楽しかったですね、メリーゴーランド」

「あぁ、たまにはいいな」



あっという間に回り終えてしまったメリーゴーランドから降り、私と貴人さんはまた園内を歩いていく。

言葉がなくとも自然とつなぐ手が、やっぱり愛しい。



「次はどれにする?」

「えーと、じゃあお化け屋敷……」

「ほう?お前いい度胸だなぁ」



調子に乗って冗談を言う私に、彼は笑っていない目で「ははは」と笑う。



「あれ、貴人くん?」



するとその時、響いたのは貴人さんの名を呼ぶ高い声。


貴人、くん?

聞き慣れないその呼び方に貴人さんとふたり振り向けば、そこにいたのはパーマのかかった茶色い髪をした女性がいた。



男の人を連れたその人は、貴人さんよりも少し年上だろうか、豹柄のカーディガンに黒いタイトなミニスカートとセクシーな雰囲気を漂わせている。

友達……にしてはちょっと年上?名前呼びってことは仕事関係の人ではないだろうし……。



貴人さんとの関連性を探るようにまじまじと見てしまう私の視線に気付くことなく、女性は笑って貴人さんへ話しかける。

それに対し、貴人さんも笑顔で返した。



「美嘉さん。お久しぶりです」

「久しぶり〜、そんな可愛い彼女連れちゃって、デート?」

「えぇ。美嘉さんもデートですか?」



「そうなの」、と笑う彼女に隣に立つ男性はにこにことした笑顔で会話を見守っている。

美嘉さん、って……貴人さんも名前呼びだ。どんな関係なんだろう、ますます気になってしまう。


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