キミノカケラ〜群青色の空と君と〜


「嘘じゃない」


「じゃ、じゃああの子は……ナオちゃんは?」


「あの子は患者さんの子供だ」


「患者さんの子供?それだけでなんでパパって呼ぶの?」


「あの子のママは父さんの受け持ちの患者さんで、検診の度にナオちゃんも連れてくる。ナオちゃんのパパは海外に単身赴任してる人で滅多に会えないんだ。だから背格好の似てる父さんにパパを重ねてるんだと思う。それで、いつの間にかパパって呼ばれるようになった」


「ホントに?本当にそれだけなの?」



こんな人生を歩んでくると、必要以上に疑い深くなる。
自分が本当に信用出来る人以外の言葉を、素直に信じることが出来ない。

特にお父さんは、私を捨てた実父だ。
捨てられる前まで大好きだった分、お父さんを信じられるようになるまでは時間が掛かるだろう。



「本当だ。父さんは家を出てからずっと一人だった。父さんの家族はサチだけなんだ」



一歩、また一歩と。ゆっくりと私に歩み寄るお父さん。

その目は真摯で、これ以上疑いようがないほど真っ直ぐだった。


だけど……
この人は、私を心から…本当に心の奥底から愛してくれてるのだろうか…



「信じてくれ、サチ」



信じたい気持ちもある。
だけど、信じるのが怖い。

信じて、また裏切られるのはもう嫌だ。


真っ直ぐな視線から目をサッと逸らす。


私はどうしたらいい?
私はどうしたいの?


何も答えられなくて、ただ自分の靴の爪先を見つめる。


すると、「お父さん」と今まで見守ってくれていたシュウが私の隣りに並んだのが気配で感じられた。



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