後悔恋愛
「フ~ン別に、お前の名前なんか、別に、別に聞いてねーし。」
せっかく私が勇気を出して言ったというのに、彼のこの態度。少しイラッときたけど、初っ端
から悪い印象を与えないように、柔らかく返すことにした。
「へ~。初対面なのに、そんなこと言うんだ~。残念。」
「ハンッ。じゃあ、興味持てってのか。」
彼は、思いっきり、というのに相応しい様な大声で言った。すると案の定、森山先生に
注意されていた。
「佐藤。遅刻した上に、先生が話している途中に大声を出すなんて、本当に高三ですか。
いい?ここは、全国的にもレベルの高い大和山高校(ヤマトヤマコウコウ)。その三年生
ともあろう者が、このような態度でいいのですか。あなたは模範生だと聞いていたのですが ねぇ。」
さっきより厳しめの声で彼女は言った。
「すいません。つい、感情的になってしまいまして。」
彼は、誰に罪を擦り付けることもなく、そういった。
「あら。誰に対しても落ち着いていると聞いたので、期待していたのですがねぇ。
遅刻に始まり、まったく・・・」
そう言いかけた時、チャイムは鳴った。森山先生は、時間に厳しい。
「あら。今から10分休憩。トラブルの無いように。」
そう言うと、静かに去っていった。
私は、中学の時からの友達、“ウッチー”こと内田海斗、“リッキー”こと
小木陸、“そらち”こと仁井町空のところへ駆け寄った。ちなみに、前者2名は
男子、最後の一人は女子である。
「リッキー、ウッチー、そらち~!!一緒になれて良かったよ~!」
そういいつつ、空に抱きついた。
「ゲホゲホッ。もぉ、スーったら苦しいんだけど~!でもホント、一緒になれて良かった
よぉお~~!!」
空が嬉しそうに言う。
「だよな~、俺達のキズナ、最強じゃね?」
海斗が言った。男子二人は、私たちに告ったことがキッカケで、友達になった。
陸は空に、海斗は私に。
「ねーね、スー、今度の土日、“ララパラダ”にいこー!
“トパーズ”に、“にゃん×2ブラザーズ”の文房具、いっぱい売ってたよ♪」
空が言った。
“ララパラダ”っていうのは、大型デパートの名前で、“トパーズ”はファンシーショップ
の名前。“ニャン×2ブラザーズ”は、私が大好きなネコのキャラクター。
「おぉ、二人でどっかいくのか?だったら俺らも・・・」
海斗がそういいかけたとき、無情(?)にもチャイムは鳴った。
私たちがチャイムぎりぎりに座ったのを見計らって、いつのまにか教室に来ていた
森山先生は切り出した。
「教科書を配りたいのですが、誰か職員室まで取りに行ってくれませんか。」
すると、やっぱり(?)沢山の人手が集まった。
「ありがとう。じゃぁ、職員室の私の机の上にあるので。」
先生のその言葉で、みんなが一斉
に動き出した。そのなかには、陸・海斗・空の3人もいた。なら私も、と思ったが、
あまりにも人数が多すぎる。だけど。皮肉なことに、私の席の隣の人、つまり、佐藤僚は、
席に座ったままだった。
「佐山さん。あなたもそこそこの成績だと聞いています。瀬戸大学を狙えるぐらいの。」
ーーーーーーーーー瀬戸大学。
そこは、この周辺でもかなりレベルの高い大学。昨年、二者懇談で、担任の先生に
薦められた場所。
「このままの努力を続けていけば、大丈夫だろう」、と。
「まぁ、そうとは聞いていますが・・・。やっぱり、ムリだと思います。なので、
宮部大にでも行こうかとおもってて・・・」
宮部大。瀬戸大の次に、賢いとされる所。あそこなら確実に狙える。そう思っている。
「何をいっているのですか。成績はみましたよ。余裕ですよ。余裕。」
彼女はしかも、
「全国模試をうけてみては?」
といった。
隣の席あたりから、
「マジ?瀬戸とか・・・。このクラスの首位あたりじゃね?」
という声も聞こえてきた。
彼のその一言に、私は決意を固めた。
「私、絶対瀬戸に行きます!がんばります!」
数人だが、教室に残っていた女子たち。
「がんばれ!!」
「佐山cなら、ゼッタイいける!!ファイト~!」
「あきらめないでね~~!!」