瞬間
電話を終えた冬馬がやってきた。
「ごめんな。行こうか」
ぎゅっと繋いだ手はいつも以上に力が入っていた。
鎌倉駅について、都内に戻る電車に乗り込むと二人してため息が出た。
歩き疲れて、二人で顔を見合わせて笑った。
冬馬とはいつでもタイミングが一緒だった。ため息も、あくびも、くしゃみも、キスも…
無償にキスをしたくなった。
冬馬がこっちを見る。
口パクで
後でな…
ほら、また、一緒。
品川から山手線に乗り換えて、恵比寿に降り立つ頃にはすっかり真っ暗になっていた。
雪はまだ降り続いていた。
恵比寿の小道の入った所の店に行った。
店内はランプの光で淡く光っていた。
イタリアンだろうか、パスタやピザが各テーブルに運ばれていく。奥にはピザ窯があって、外国人が大きなピザ生地をまわしていた。
「たまには、こういう店いいね~」
「チーズフォンデュがうまいんだよ」
「来たことあるの!?」
「一度だけね」
チーズフォンデュは、白ワインの風味がまだ残っていて、まともに酒を飲んだことない私にも大人に美味しく思えた。
鮮やかなパプリカにトロトロのチーズか絡み付く。冷えた内蔵に、いつまでも熱いチーズがしみていた。
デザートにティラミスと、ラズベリーのジェラートを頼んだ。
大人なら、シャンパンと…と、行きたいが今はアールグレイが心地よかった。
「まいか、楽しかったか?」
「うん。また、行きたいね。今度は紫陽花の咲く頃がいいね」
「うん。でもさ…」
言いかけた時にまた冬馬のスマホが鳴った。
今度は出らずに、サイレントにした。
「電話なってるし、そろそろ出ようよ。明日の講義1限からだし。」
「もう、10時か…まいかと居ると時間は一瞬で過ぎるな」
「楽しいって証拠だよ」
会計を済ませて、歩き始めると冬馬が繋いだ手を離して肩を抱き寄せてきた。
「寒いからくっついてるといいんだよ」
キスもセックスもしたけど、未だにどきどきするのは、冬馬を本当に好きだからなんだと思った。