千代紙の小鳥
 

と。店の扉がカランコロンと音を鳴らした時。

とと、とと、とと。
とととととん、と。と、とと、と、ととととん、とととん。


(来たっ)

「おおいらっしゃい。雀ちゃん最近調子いいんだって?星野先生が言ってたよ。」

「ええ。今日も一人で検査行ってます。急に調子が―――」

意識の外ではマスターと女性客の会話。けれどその会話は障子越しに聞こえてくる様に籠っている。

「えーっと…」

この机の空間だけが時空から切り取られた様な錯覚の中、俺は新たな問いかけに答える。

と、と。
と、とと、とと、ととととん、とととん、とと、とととん。


それから一時間待ってみたが、返事は来なかった。

(一日一回しか繋がらないって事か?)



『紅葉、これワイヤレス?』
『さあ、怪奇現象?』

たった一往復の、今日の俺と相手の会話。
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