千代紙の小鳥

「ねえ、五月七日ってなんの日か知ってる?」

「ぼくと陽とお姫さまのたんじょうびでしょー?」







雲一つない″日本晴れ”の青空の下、手を繋ぎながら歩く同じ背丈、同じ声、同じ目の色を持つ彼らは双子である。

数か月前に7歳の誕生日を迎えたばかりの双子の手首には、広く揺らすそれにつられる様に色違いの数珠がシャラン、シャラン、と音を鳴らして揺れている。


「どんな人なんだろうねー。お姫さま」

「すっごくきれいな人ってママ言ってたねー」

「でもすごくすごくすっごーく長生きしてるんでしょー?」

「じゃあすごくきれいなおばあちゃんなのかなー?」

「会ってみたいねー」

「そうだねー」

「ママがさ、『お姫様のお陰で僕たちも幸せなんだよ。』って言ってたね」

「うん、言ってた。どういういみなんだろうねー」

「ねー」




語尾が伸びるその話し方は、無垢そのもので。

双子は、自分たちの存在が本来喜ばれるモノではないことを、知らない。


「帰ったらきいてみよっかー」

「うん、そうしようー!」





  それでも。

あの子たちは愛される。何も知らない姫に守られながら。
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