千代紙の小鳥
この街には、何百年もの月日を眠りながら存在している姫がいる。


時が流れる度にその存在や、力や理由を知る者やその記憶は、色のついた水へ透明のそれが流れ込む様に、少しずつ少しずつ薄れていった。

それでも、薄くなりながらもまだ色のついた水が一縷の糸となり街を漂い、その存在は静かに誰かの記憶へと絡んでゆく。



あの子たちは、その糸が具現化したような存在なのだ。


「「ねえ、ママー」」

「どうしたの?」





「僕たちの幸せはお姫さまのおかげって」「どういう意味ー?」





その具現化としての存在理由が、理不尽な言い伝えによるものであったとしても。




「・・・―――、!!」

「「ママッッ!!?」」






あの子たちが、その事を知るのは、まだ早すぎる。


(何も悪くないの。)

(何も間違えていないの。)


(何一つ、罪なんて背負っていないのよ。)
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