あかねいろ Thousand Leaves! 完全版
パパとは、無言のままだった。

一言も軽口を叩く気分になれなかった。



館山の駅が見えた。

「お父さん、元気でね」


月並みの言葉しか思い浮かばない。



パパが乾いた声で言った。


「本当は…

女の子がいるはずだったんだ。

産まれる前に、死んじゃったけどね」



それ以上、何も言わなかった。



車が止まって、外へ出た。



私はパパに手を振った。


パパは軽く手を上げて、車はすぐに走り去っていった。

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