強引な彼との社内恋愛事情

階段に足をかけて、広重はヒョイヒョイと上っていく。

猿みたいな奴。

モンキー広重。

ヒールは低めのパンプスだけど、少し上りづらい。


「はい。千花さん」と声がするから、足元から目を離した。


広重が私に手を伸ばしていた。


「別に上れるよ」


「危ないから繋ぎましょう」


「いいから。早く行ってよ。ていうか手を繋ぎながら上るほうが危ないと思わない?」


「千花さん。落ちるときは一緒だ」なんて真顔で言うから、「早く上って」と言った。


顔のパーツを中心に寄せて変な顔をする。どうやら、無言でなにかを訴えているらしい。

ああ、もう広重。
面倒くさいな。
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