強引な彼との社内恋愛事情

「千花さんの好きなものがわからなかったです」


そりゃ言ったことないから当たり前だ。


広げられた袋から桃の缶酎ハイを取り出し手渡す。
無言で受け取った。
ビールは得意じゃないから、いつも甘めのお酒を呑む私には丁度良かった。

広重は缶ビール。そのまま乾杯した。

やっぱり少し肌寒いと思っていると肩が少し重くなった。
さっきまで着ていた広重のジャケットがかけられていたからだ。


やるな、広重。


「寒くないの?」


「俺は平気ですよ」


そう言いながら唇が少し震えていた。
バレバレな嘘をつくのが、嘘をつけない子供みたいだ。


「そんなに寒いならいらない」肩にかけてあるジャケットを返そうとすると、


「平気ですから着て下さい」とかけ直されてしまう。


「いいよ。別に先輩だからって気を遣わないでも」


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