強引な彼との社内恋愛事情

「入社したての遠山は初々しくて可愛かったのになー」


だから。
そういう冗談は私に気持ちがあるなら言ってほしいのに。

「なんでも一生懸命だから、構いたくなるタイプ」


ああ。
うん。
田原さんは入社した時から優しかった。
気遣ってくれてた。

私が誰かに嫌われようと、田原さんは変わらなかった。
今だってそうだ。
だから、私は好きになったんだと思う。

カラカラに乾いてるはずの心が潤うのは、そんな顔をするからだ。
だけど、恵の雨じゃないのは確か。
だって、嬉しくないんだもん。


「今は可愛くないとでも言いたいんですね」


「可愛いと言ってくる奴に素直に飛び込むのもアリだと思うけどな」


「年下と社内恋愛には懲りましたから」


「でも。広重は広重だろ?」


「そうですけど」


「あんなことひとつで全てが嘘みたいな顔するな」


「……」


「なっ」って笑った。
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