ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「き、企画中です……」


小さな声で呟きながら肩を竦めると、プッと吹き出して笑ってから、響さんがポンと私の頭を軽く叩いた。


「別に特別なことしてくれなくていいよ。今のままで十分だから」


優しい瞳にドキッとしてしまう。


思えば、響さんはいつも私にそう言ってくれていた。
そのままのお前でいい、って。
だから私も気負い過ぎずありのままでいられる。


はい、と返事をしながら、反射的に熱くなる頬を隠そうと俯いた。
私達の様子を、向かい側の二人がクスクス笑っていた。


「じゃ、私達が祝うのは、引越しの方だけでいいかな? それでは、ちょっと遅くなったが、響と萌ちゃんの新生活を祝して、乾杯!」


お義父様の音頭に呼応して、全員がグラスを掲げる。
乾杯!と言った後、少しだけグラスを傾けて、響さんのグラスとカチンとぶつけた。


スッキリした炭酸が喉を潤して流れて行くのを感じる。
ちょっと息をついてグラスをテーブルに戻すと、お義母様が傍に置いた冊子を再び手に持っていた。


「それにしても、萌ちゃんすごいわね。この特集ページ、萌ちゃんが担当したって言ってたやつでしょう?」

「あ、はい」


目を細めるお義母様に、私ははにかみながら頷いた。


お義母様の手にあるのは、つい先週発行したばかりの社内報だ。
私が担当させてもらった座談会の連載は、巻中で五ページに渡って掲載されている。
< 203 / 224 >

この作品をシェア

pagetop