ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
カーテンの隙間から、金色に輝く満月の影が見える。


月明かりに仄かに浮かび上がるシルエット。
徐々に鎮まって行く乱れた吐息。


私を抱いた後、響さんはゆっくり目を閉じて、いつしか規則正しい寝息が聞こえて来た。
しっとり汗ばんだ胸に両腕を載せて、私はその寝顔を見上げる。


時々子供っぽいところがある。
でも一番象徴的なのは、無防備過ぎるこの寝顔だってことを、恋に落ちた後で初めて知った。


「……響さん」


穏やかに眠る響さんを小さな声で呼んだ。
もちろん、返事はなくてもいい。


「……ありがとう」


何気ない言葉が、告げた私の心を大きく震わせる。
想いが際限なく湧き上がって来て、ちょっと苦しいくらいだ。


「愛してます。何よりも、誰よりも」


響さんへの恋心は治まりを知らない。


ありふれた言葉だけじゃどうやっても伝えきれない。
それでも私は、敢えて口に出した。


子供みたいな寝顔。
薄く開いた唇に、そっとキスを落とす。
ほんのわずかに、響さんが身じろぎした。


その反応を見て、私は穏やかな微笑みを浮かべた。
そして、かすかに上下する響さんの胸に、そっと頬を載せる。


「だからずっと……そばにいて下さいね」


ゆっくり目を閉じながら、響さんへの一生のお願いを口にした。
< 222 / 224 >

この作品をシェア

pagetop