ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「ネクタイピンとカフスボタンか。素敵だね。ありがたく使わせてもらうよ」


お義父様は優しい目で小さな箱の中の品を見つめてから、私にニコッと微笑みかけた。


珊瑚と小さな真珠をあしらったちょっと高級なその品は、今日のお義父様のダークスーツにも絶対似合う。


「気に入っていただけて、よかったです。響さんにお任せして正解でした」


ホッとしながら付け加えると、お義父様が少しだけ眉を寄せた。


「なんだ、選んだのは響なのか?」

「え? はい。素敵でしょ? さすが響さんですよね。
お義父様のことよくわかってるし、センスも完璧だし……」


言いながら一人で盛り上がって小さくパチパチと手を叩いた時、私の背後でカツッと靴の踵が鳴るのが聞こえた。


「俺の趣味じゃ、不満か? 親父」

「あ、響さん!」


顔を上げて振り返ると同時に、響さんが私の隣に勢い良く腰を下ろした。


「そりゃあ、可愛い娘からだと思う方が嬉しいな」


箱に蓋をしてテーブルの隅に置くと、お義父様はどこか意地悪に響さんに視線を向けた。


「……ほら。だから言ったろ? 萌が選んだ方が喜ぶって」


ぶっきら棒に言いながら、響さんは店員からメニューを受け取っている。
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