ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
結局夜はお風呂どころの騒ぎじゃなくて、私はほとんど眠れないまま朝を迎えた。


カーテンの向こうが明るくなって、街に朝が訪れる。
一日が始まるのを意識しながら、私はリビングに出ていけない。


やがて枕元でアラームが鳴った。


手探りで止めて、顔を枕に埋める。
時間は確認しなくてもわかる。
響さんに合わせて、いつも私が起きる時間だ。


響さんは私より三十分早く家を出る。
気にしなくていいって言われたけど、私もいつも響さんに合わせて早起きしていた。


ドアの向こうから物音が聞こえてきた。
響さんが部屋からいつもと同じ時間に出て来て、出勤支度をしているのがわかる。


朝ごはんを食べる習慣がないから、私が出来るのは熱いコーヒーを淹れるくらい。
それでも奥様として当然の仕事だ、と自己満足していた。


でも今日は無理。


一晩経ったからって、何もなかったようになんて振る舞えない。
むしろこんな明らかに寝不足な顔を見せない方がいいと思う。


響さんも私の部屋のドアをノックしようとはしない。
私を気遣うようにテレビの音量も下げて、いつもより静かに、いつもと変わらないペースで支度を終えて……。


朝七時十五分。
家を出て行った。


しんと静まり返ったリビングに出て、シンクに残ったマグカップをただ見つめる。


自分でコーヒー淹れたのかな。


私は頭をガシガシ掻きながら、自己嫌悪の溜め息をついた。
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