笑うドクロと泣いた歌姫
天空の鏡
見渡す限りの紺碧は、キラキラと太陽の光を反射させて目映いくらいの晴天がそこには広がっている。

波間を縫うように進む船は、不規則に揺れメインマストにはユラユラとはためく……


「ド、ドクロっ?」

喉がひきつるのも、声が上擦るのも仕方ない。同じ状況なら誰だって我が目を疑うはずだ。

王国セリヌンディースから遠く離れたここは、およそ昨日までのユーリならば遠くから眺めるだけの憧れに過ぎなかった。



瞬きを数度繰返し、何度も目をさすった。
勘違いでも、夢でもないことをユーリは既に確かめた。


「だからって信じられるかよっ……!」


憧れでしかなかったその場所は
手の届くはずのなかったその場所は


足を踏み入れることすら許されない自由の象徴。
人々は畏怖と敬意をこめてこの海を≪天空の鏡≫と、そう呼ぶのだ。

< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop