知ることから始まるんだ!
翌日は幸樹は自宅で研究するというので、明日奈は兄の店へと普通に出勤していった。


智樹は幸樹の家に世話になる間、幸太郎のエサやりと掃除、庭の草むしりの手伝いをすることになった。


「ねぇ、明日奈さんってどうしておじさんの研究室から見える部屋にいるの?
おじさん、女の人嫌いっていつも言ってたでしょ。」


「ああ、明日奈さんはストーカーに狙われていてね、ここにきてからもそいつがのぞいてたりして、彼女は不安で眠れなくて倒れることもあってね。」


「ふ~ん。おじさんは正義の味方なんだ!」


「そうだな。おじさんは明日奈さんのボディガードってとこだ。」


「かっこいいーーー!」


「ははは、大したことないって。」




一方、明日奈は崇の店でデザート作りで大忙しだった。


「はぁ、兄さんがお店に出るようになってから、かなりの女性客がついたわ。
おかげでデザートの注文が多くて、うれしい悲鳴よ。」


「そりゃ、俺だって親父の子だからねぇ。
店にいればそこそこ有名になるだろうし、それも商売繁盛の秘訣さ。

俺はテレビでフードコーディネーターなんてやるのは嫌だったからな。
もっと客を身近で感じて仲間意識の強いアットホームな店をしたかったんだ。」


「ふふっ、お母様の趣味ね。
お母様は家族での食事やお茶の時間が好きだったわね。
食べ物には日頃からとっても気を遣ってたのに・・・あっけなく交通事故で死んじゃうなんて。
あれからお父様は仕事ばかりになってしまった。」


「そうだな。けど、最近は寛容になってきたと思うよ。
おまえのファンやストーカーも気をつけなきゃならないし、優奈も年頃だし、母さんのことをひきずってなんかいられないせいだろうな。」


「悪いことがいい影響になるなんて・・・ね。」


「あ、おまえ、幸樹さんによくお礼を言ったか?
あの人、とっつきは悪いかもしれないけど、いい人だよ。

うちのバイトのコにきいたんだけど、幸樹さんとこの学生さんがけっこうきてくれてて、おまえのことを守ってくれてたみたいだ。」


「えっ?」


「いいとこあるじゃないか。
この間も、おまえ助けてもらって連れて帰ってもらっただろう?

なんか親戚の子も今面倒みてるとか・・・ってほんとクセはあるかもしれないけど、いい人だな。」


「うん・・・。女嫌いっていうのに。あれ?もしかして私は女性扱いされてないだけなのかも。」


「それはないだろう。
男だったら、あんなに大事そうに連れ帰ったりしないしな。」


「大事そう・・・?やだ。兄さんの想像いやらしい。」


「でもなぁ、おまえみたいな美人は早く結婚して子育てした方がいいんだ。
そしたら、ファンだのストーカーだの気にしなくて済むし、夫が守ってくれるだろ。
あ、守れる男だったらの話だけどな。」


「もう、兄さんったら。」
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