知ることから始まるんだ!
智樹がひとりだった理由について、最初は母親の智香といっしょにやってきたが智香の具合が悪くなり、運転手に病院へ行くように智樹が指示したらしく、智樹はすぐに父親の芳樹に連絡をいれ、幸樹の使用人に家のカギをあけてもらうことになっていた・・・という。


「すごい・・・こんな小さいのに。」


「ぼくの妹はぼくがそばにいない方がきっと元気なんだ。
だから、これでいいだよ。」


「どうして?ママは智樹くんがそばにいてくれた方がうれしいはずよ。」


「だめだよ。ぼくは甘えん坊だから、ママといるとワガママになっちゃうもん。
そうしたらママは無理をするでしょ。
妹が死んじゃうかもしれないでしょ。
生まれてから、ぼくはパパみたいな立派なお兄ちゃんなんだって言わなきゃいけないから、がんばらないと。」


「バカねぇ。私が戻って来なかったら、まだひとりでここにいるとこなのよ。
雨降って濡れちゃったらどうするつもりだったのよ。

とにかく入って。ホットケーキでも焼いてあげるから。」


「えっ?ホットケーキ作ってくれるの?
すごい手間なんじゃないの?いいの?」


「??手間なんてしれてるじゃない。
ママは作ってくれないの?」


「ママはパパと同じように難しい仕事してるから、料理はあんまり得意じゃないの。
いつも袋入りの買ったものとか、パン屋さんやケーキ屋さんのおやつだよ。」


「私はね、私のパパがお料理する仕事だったから、小さいころからいろんな料理に囲まれてきたの。
昔はお金もあんまりなかったから、粉からまぜて何か作るのがあたりまえだったのよ。
着替えとかいつも使うものはこの大きな荷物よね。

運ぶのはおじさまにやってもらうとして、汚れてもいい服に着替えて・・・手を洗いましょうね。」



それから1時間ほどたって、幸樹があわてて帰宅してきた。


「智樹!!どこだ。今日に限って頼める人がいなくてさ・・・あれ?」


幸樹が食卓を見ると、幸樹宛ての手紙があってホットケーキとクッキーがあり、お茶の用意がしてあった。


「明日奈・・・智樹!・・・どこにいるんだ?」


幸樹が自分の研究室へ行ってみると、隣の部屋に人の影がある。


そっとのぞいてみると、疲れて眠っている智樹と明日奈がいた。


「智樹・・・そっか。ありがとう明日奈。」



幸樹は食卓にあった手紙を広げてみた。


『おかえりなさい。智樹くんが手伝ってくれたので、お菓子を作りました。
先生も食べてください。

帰ってくると智樹くんがひとりでびっくりしちゃったけれど、あとでお母様からお礼の電話がありました。
少し出血があったらしいですが、赤ちゃんも無事だったそうです。

智樹くんは先生と似て意地っ張りなのか、ときどき泣きそうになるのにがんばっちゃう子なんですね。
な~んちゃって。
真面目でかわいくて、一生懸命お手伝いしてくれたので、私もとっても楽しかったです。』



(そっか。初日からすまなかった・・・。)
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