溺壊
―――そうか。
表してはいけないんだ。
表すものがない。
それほどまでに美しい。
表した瞬間、その美しいオトは、たちまち価値が落ちる。
だから……表してはならない。
そうして彼女は、見つけた…と、笑う。
身体中に、もうとっくになくなってたと思っていた、いや、無くなったはずの血。
それが今、もう一度力強く自分のなかを巡るのを確認した。
彼女の傍でなら、僕は生きていける、と。
笑った。
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