アイザワさんとアイザワさん

「おばあちゃんのことが、許せないんじゃないんです。私にも『こうすれば良かった』って後悔はたくさんあります。けど、もう……過去のことです。過去は変えられませんし、戻ることも、もうできません。だから離れたって何も変わらないんですよ。傷は……そのまま残るだけです。」


「……許せないと思ったのは、私の気持ちも聞かずに私から離れようとしたことです。」


私は一つ、深呼吸をして背筋を伸ばした。
自分の気持ちを間違いなく告げるために。



「……好きです。私はあなたのことが好きなんです。」



そう言った瞬間、相澤はとても驚いた表情になった。


「だから、これからは私とずっと一緒にいてください。私から離れようとしたって、離してあげませんから。辛いことや後悔も全部逃げないで……私と一緒に抱えてくれませんか?」


話してるうちにだんだん涙が溢れてくるのが分かったけれど、私は笑顔で言い切った。



涙に濡れた私の顔は、きっとみっともないくらいぐちゃぐちゃになっているはず。



でも、みっともないところを見せるのも、過去を見せ合って傷つくのも、同じ後悔を抱えるあなたとしかできないことだ。



これから傷つけ合ったとしても、同じ思いを抱えている私たちは、きっと手を取り合って一緒に乗り越えていけるはず。


……そうでしょう?



「ずっと一緒にって……一生離れないつもりかよ……お前、凄いな。」


そう冗談めかして相澤は言ったけど、苦しげな表情は消えて、その目には涙がじわりと浮かんでいた。
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