アイザワさんとアイザワさん

私がのほほんと目の前の幸せに浸ってる間に、相澤はちゃんと先のことを考えてくれていたんだ……


『結婚』するから両親に挨拶に行く。
普通の人にとっては当たり前のことだけど、私にとっては、とてもとても高いハードルのように思えた。


「ところでさ、」


私の気持ちを察してか、微妙な空気を変えようとしてか、相澤がオーナーに声をかけた。


「俺の移動の話ってどうなった?」


あっ、……それが今日の本題でした。


何だか大先生の勢いに押されて、『結婚を報告しに来た人達』みたいな扱いになってしまっていたけど、ほんとうは相澤が他店に移動するかどうかってことを聞きに来たんだった。


「あぁ、それね。忘れてたから。」


相澤オーナーはあっさりと言った。


本題の会話はわずか10秒ほどで終了してしまった……


とりあえず、離ればなれにはならずに済んだらしい。そのことにほっと胸を撫で下ろした。

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