アイザワさんとアイザワさん

「まぁ、二人の付き合いに関してはどうこう言う気はないよ。樹はともかく、相沢さんはきちんとしてるから仕事に恋愛は持ち込まないだろうし。信用してるからね。」


そう相澤オーナーが言うと「俺のことも、いいかげん信用してくれよ……」とため息を吐きながら相澤が言った。


からかわれているだけなのか、そんなに『信用』してもらえなくなるほどのことをしてきたのか……


その事は後できちんと聞いて、確認しておかなくちゃいけないなぁと思った。


相澤の抗議はともかく……まぁ、二人には認めてもらえたってことなんだろうか。


二人に礼を言って部屋を後にしようとした私達に、大先生は「今度デイサービスのほうにも遊びに来なさい。」と優しく微笑んで声をかけてくれた。


大先生の姿や振る舞いは瞬先生に似ているけど、その微笑みは相澤にちょっと似ているなと思った。



「もう私も若くないから、『孫』は早めで頼むよ。」



帰りかけた私達の背中にからかうように投げられた大先生の言葉に、私は首まで真っ赤になった。


……だから、私達が考えていない将来のことまで手を伸ばさないで下さいってば。



帰り道で「……俺と一緒にいる、ってことは『あれ』とも何十年か付き合っていくってことだからな。」とため息交じりに相澤が言った。



やっぱりこの人は振り回されてきたんだ……気の毒だとは思ったけど、二人を『あれ』呼ばわりしたことが可笑しくて、思わず笑ってしまった。
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