アイザワさんとアイザワさん

「そうか?こんなもんじゃないのか?」

……絶対、違うと思う。

4月に入ってから、明らかに女性客が増えた。
『分析』してみなよ。得意のさぁ。一目瞭然だって分かるから。


二人並んでレジに立つと、まず間違いなく相澤の方へと女性客は行く。次の人に「お隣のレジへどうぞ。」なんて言ったら、睨まれたり、明らかにがっかりされる勢いだ。一旦レジを離れて並び直す強者まで現れている。


今まで、私と仲良く話してくれていた、常連のお姉ちゃんも、おばちゃんも、おじょうちゃんも、おばあちゃんでさえも、私の存在なんて無いもののように、完全無視だ。


なかなか、奇妙な光景だった。


凄いな、イケメンの吸引力って。
人生楽勝じゃないか。
こんだけ人を惹き付ける容姿があるなら、何で店長とかやってんの?
都会に行って、モデルとかやって、大勢の女性のために生かして来ればいいのに。


あ、私より背が低いからモデルは無理かー。
アハハ。


もはや、変な嫉妬をしてしまうくらいだ。そんな自分が馬鹿らしかったけど、6年かけて築いてきた地元の人への繋がりがちょっとだけ崩れてしまったような気がして悲しかったのだ。



みんな、やっぱり最後は顔なんだ……


忙しさもあったけど、どんどん気持ちが落ち込んでいく。


どうやら、私は新しい浴槽ではなかなかくつろげないらしい。

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